ダンテ『神曲』に隠された数の不思議

こんにちは、マイです。

今回は、イタリア古典文学を代表するダンテの『神曲』、特に作品の中に潜んでいる意味深な『数』に着目してご紹介しようと思います。

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ダンテの「地獄」

『神曲』は詩の形式で韻を踏んで書かれています。また使われているイタリア語も現在のものとは違っており古めかしいので、イタリア人でも読むのは少し難しく、イタリア人は高校の授業で『神曲』を勉強するそうです。この作品の舞台は地獄・煉獄・天国(!) であり、主人公ダンテとベアトリーチェの愛、そしてキリスト教を扱っている作品でもあります。

『神曲』の作者ダンテは、彼の作品を通してヒロインとして描かれるベアトリーチェに「9」歳の時に出会い、「9」年後に再会したとされています。この「9」はベアトリーチェ数とも呼ばれているほど象徴的な数で、3の二乗ということにお気づきになりましたか?

この「3」という数字は、彼の作品によく登場するといいます。それはなぜなのでしょう?数字「3」は一体何を意味しているのでしょうか?

この謎を解き明かすためには、キリスト教における数の位置づけが重要になってきます。

まず、キリスト教の神は唯一の存在であり、その統一性・全一性は数字の1によって象徴されます。

そして神の3つの側面、つまり「三位一体」である神(父)・精霊・キリスト(子) は数字の3によって象徴されます。

『神曲』の構成も3を中心になされています。まず、作品を構成している詩の形式は3行詩節(3行で1セット) であり、1行の総音節は33音節、さらに地獄篇、煉獄篇、天国篇と3つある各篇も、33の歌章から構成されています。

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ダンテの「煉獄」

3行詩節は、“terza” rima (3韻句法) という『神曲』のためにダンテが編み出した韻律形式に則って、ABA – BCB – CDC – … というように鎖のように韻を踏む形式です。私の読んだ本では、3韻句法は極めて難しく、ダンテ以後でこの形式を使いこなせた詩人はいないと述べられており、さらにはとりわけイタリア語以外の外国語で3韻句法をこれだけ長く再現することはまったく不可能であるとさえ言われていました。ダンテ、恐るべしです。

地獄編、煉獄編、天国編の3編×33歌章の合計99の歌章に、序歌として1歌章加わるため、『神曲』は全体で100の歌章から成っています。この「100」は完全な数「10」 を掛け合わせた数であることから、「全存在・自然・宇宙」、さらには「神」を表しているといいます。

数の象徴的な意味は他の数にもあります。例えば・・・

5: 五感を象徴するため、その派生から「人間の誤った愛」

11: 完全数10から1余っているため、モーセの十戒を破っているという連想から「罪」

7: 「精霊」の象徴

地獄篇は3, 5, 9, 11 という象徴的な数によって構成されており、それを理解することで作品の中で暗示されている意味を端的に感じとることができます。ちなみに9を除くこれらの数は、キリスト教において伝統的に意味を持つ数として認識されてきたそうです。

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ダンテの「天国」

余談ですが、数だけではなく「対称性」も『神曲』の大きな構成要素です。煉獄篇を中心軸に、地獄篇と天国篇の各歌章番号で内容・主題の照応関係がみられることは一般によく知られています。また『神曲』のテーマである”amore(愛)” という単語の置かれ方にも、対称性がみられるといいます。

このような緻密に計算された『神曲』の構成について一たび知ると、ダンテが『神曲』の構想に28年もの歳月を要したという理由にも納得です。

今回の記事を書く際に、藤谷道夫さんの「ダンテ『神曲』における数的構成」(2014) を参考に読みました。この記事を読んで興味を持ったからもっと知りたい、という方は是非読んでみてください!

マイ

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